高知 土佐風土記弐

高知県赤岡町。
土佐湾に近い、田園の中の住宅地です。屋根が2重に重なっています。近隣の家はどこも同じ屋根でしかも皆、大豪邸です。こちらではこれが当たり前なのでは、というぐらいどのお家も、立派な塀・石垣に囲われた御殿です。

台風銀座とよばれる暴風地域なので、屋根は重くないと、飛ばされてしまうとのこと。屋根を葺く瓦職人さんは、瓦の下地となる土を大量に盛り、重さを加える事で、暴風の揺れを防ぎます。当然、重い屋根を支える、梁や柱も2割り増しの部材を使用するとのことです。屋根の意匠ですが屋根の角先が斜めにせりあがっています。木造の寺社建築をご存知の方なら、これはちゃんとした大工さんがいないとできない意匠だとわかります。東京ではなかなか見つけられないと、工務店の方がぼやいていたのを思い出しました。

壁は土佐漆喰といわれる塗り壁の漆喰壁で、高知には腕の良い左官職人さんが多いようです。ちゃんとした、白い漆喰塗り壁も東京ではほとんど見ません。左官壁についている屋根のひさしみたいなものは 水切り瓦とよばれるもの。横殴りの暴風雨から屋根や壁を守るためのものです。

写真の屋根を支える桁ですが、木の根っこの部分をお互い掛け合わせて使っています。これには驚きましたが、木の根っこの部分まで使うのは、高知独自のものだそうです。

どの家も当たり前のようにたっていますが、大工さんというか、職人さんが手間をかけて、家を造っているのがよくわかりました。 ただ心配だった事がひとつ。海からすぐで海抜も3mほど。海に近づくと1mもないところにこういう家々が建っているのです。高知も、大昔に大地震があって大津波が来た歴史があります。今、日本のどの地域に大地震が来て、大津波が来るか、どこでもありうるといいます。台風が猛威を振るう地域にしては、このあたりは津波への対処はあまり考えられていないように感じました。防波堤も特段立派ではないのです。
土佐湾の海を家々の隙間から見てそう思いました。太平洋の黒潮の浪。津波は鯨のように真っ黒で、想像を絶する大きさになるのではと。高知というお国柄、浪の反骨具合も相当なものだと思えてしまいます。