福島 いわき市久之浜町

福島県いわき市久ノ浜町。津波で流された星廼宮神社の仮社殿に寄ってから海に向かってあるきはじめました。

高速道路上に出る、常磐自動車 広野-常磐富岡 災害通行止の電光掲示板。昨年3月11日からほぼ1年経っても、変わらない表示です。広野IC-常磐富岡IC間は福島第一原発から半径20kmの警戒区域内に入っていることから、一般車通行止めです。広野ICの手前、いわき四倉ICでおりて、久ノ浜にむかいました。

日差しが強く、空は澄み渡っていますが、遮蔽物がなくなったせいか、海からの風が刺すように冷たく、強く体を揺らします。かぶっていた帽子を何度も飛ばされました。 連休のためか、何人かの方々が、花を供え、ひざをついて手を合わせています。自分を起点にして海の海岸線まで見渡せるため、そういう方々の様子が手にとるようにわかります。実際の距離は結構あると思うのですが、距離感がつかめません。

人は、建物や目の前に立ち上がったものを元に距離感をだいたい測っていることが、よくわかります。防波堤に出るまで、自分にあたる風の音と自分の乾いた足音が続きます。どこの家の跡も、コンクリートでできた基礎の立上がりから上は津波で持っていかれてありません。基礎とその上の木の土台を筋結する、鋼製のアンカーボルトが基礎から飛び出て、皆同じ方向に曲がっています。浪が家にぶち当たって流していった方向です。海沿いの防波堤。30cmの厚みがある防波堤の立ち上がりもところどころ破壊され、欠損しています。津波に流されてきた何かが当たってそうなったのでしょうが、想像を超えるエネルギーに、ただただ、景色の一部として目に入るだけです。

前回も書きましたが、防波堤に上がって、自分の目線下に広がるおだやかな海を見下ろしても、振り返って広がる町の荒涼とした姿がリンクしません。

風の音に交じる、かすかな高い音。チリンチリンチリン・・海にむかって手作りで作られた祭壇。「神のご平安を祈ります」の手書きの文字。ちいさな、日に焼けたぬいぐるみが、この祭壇をつくった人の姿を想像させます。

今日、福島第一原子力発電所2号機の炉内で、冷温停止の条件だった温度を越えて、80℃超に一部なったと報道がありました。
「温度計の故障の可能性もある。問題ない。」と発表。本当だとしても本当なのか。 久ノ浜町は漁業が主産業。海の放射線量の関係で今後最低2年は調査の為に漁ができないと知りました。

距離がはかれない、乾いた荒涼とした景色のように、湿度のない抑揚のない事務的な発表が、危機を考えさせない。考える事をやめさせているようです。