埼玉 人と機械と

埼玉、武川駅。蒸気機関車。SLです。特段、SLに対して興味は無かったのですが、ここ最近、テレビで蒸気機関車を改修して動かす。という番組を2回、「SL復活!C571よ永遠に」と「復活山田洋次・SLを撮る」を見まして、これは動く現物を見てみたい。となりました。両方の番組とも、一度は死に体になったSLに 再び命を吹き込むという、過程を扱ったドキュメンタリー番組でした。改修作業にあたる人々の眼差しもあわせて丁寧に、詳しく、見せてくれました。

この21世紀のハイテクな世界に、基本手作業。という、人間の手による改修作業の様子を見ていて、引き込まれました。 また、エコが要求されている この今の世界に、鉄道会社が 蒸気機関車を動かすために、人と設備に対して、多大な投資をしている事にも驚きました。動態保存(現役で動いている)されている蒸気機関車は、北は北海道から南は九州まで、多数運行しています。写真の蒸気機関車は秩父鉄道のC58 363(シゴハチ サンロクサン)。 C58形 唯一の動態保存機です。昭和19年に製造されて、東北地方で活躍した車両でした。昭和47年に廃車となりましたが、15年後の昭和62年に復活。現在も走っています。東北地方を中心に活躍した車両という事もあり、一部の収益を 被災地の方々に寄付されているとのことでした。

実際、見に行きまして、想像以上に感動しました。機関車が駅にはいってくる10分以上前から、そわそわ。 向こうから来る線路の先で踏切が カンカン と鳴り始めました。 来た!しんきろうの先、線路の先を凝視です。黒い煙と、ガッシュ ガッシュという、駆動音。真っ黒なかたまり。来た!来た!

先頭の機関車を見るために、ホームの先からホームの先まで、子供達と一緒になって、駅のホームを走ることになるとは思いもしませんでした。この日は運転席には4人の機関士さんが乗車されていました。手には軍手。額、頬には汗。ズボンのひざの部分は石炭、油で黒くなっています。運転席のバルブや、レバー、複雑な鉄の塊を目の前にして、圧倒されました。

停車から発車の合図、汽笛を鳴らすまで、4人の機関士さんが点呼をし、それぞれの役割を果しています。この大きな鉄の塊を動かすには、この儀式は避けられないのではないか。とさえ思えます。ボタン一つで自動運転。とは正反対。人と人とがいくつもの装置を動かしている手動運転です。真剣な眼差し、機器を扱う慎重な動作。機械に対しての畏れと敬意みたいなものが ひしひしと伝わってきました。 この蒸気機関車、人や荷物を運ぶ、ただの機械にすぎません。ただ、ちっぽけな人間が 機械を動かすのに、本来どれだけのエネルギーが必要だったのかを 感じる事ができたのは、感動を生む価値観を知る上でもよかったです。この自動化の進む、機械の中身が、なかなか見えてこない世界で。