設計事務所と和菓子屋が一緒になっていることについて

お客さんは設計事務所に入りづらいのではないか。と思ったことがきっかけです。お店と一緒にやっていれば、入りづらさの敷居が下がるのでは。と思いました。自分でお金を出してお店をつくる事にも意味があると思いました。和菓子屋をやりたいと言っていた友人を誘い、色々と話しあった結果、それぞれが独立した形で同居する「相乗り」という形に落ち着きました。工事費用は二人それぞれの領域で分担。大家さんや保険関係など諸々の契約関係は私自身が責任者。家賃は折半という形にしています。後々二人の間でもめないように約束事を交わして文書化しています。

始めたばかりの時はとても楽観的に考えていました。和菓子を買いに来てくれるお客さんが、家を直したり、建てたりしてくれるかもしれないぞと。しかし、そう話はうまくいきませんでした。和菓子はひとつウン百円。家は一軒建てればウン千万円はします。そうそう頼まれるものではない。という当たり前のことに気づくのにずいぶんと時間がかかりました。

ただ、一緒にやっていて良いことがありました。和菓子屋と一緒になっていることで、私の知り合いやお客さんへの手土産に困ることがありません。あと、季節や時期を意識するようになりました。一緒にやり始めてからかもしれません。その影響なのか店先に季節を意識した花を飾るようになりました。そして何より、たくさんの人とご縁を持つことができています。

お互いの知り合いに声を掛け合って、これまでにもちつき会・ちびっ子お茶教室・俳句教室・ヨガ教室・英会話教室・書の展覧会・妖怪絵画の展覧会・盆栽と陶器の個展・落語会・披露宴会場・飲み会場・炭火焼き鳥を焼く会・室内流しソーメン会・琵琶弾き語りの会・スナック不慣れの会 などを開いてきました。思い出しながら書いているのですが、その脈絡のない多彩さにちょっと驚いています。いずれも「おもしろそうだからやってみようか。」で広がってきたご縁でした。

10年目を迎えました。振り返って考えてみると、自身の建築に対しての向き合い方を、ここでの多くの人との出会いから学んできました。小さくない影響力です。人と会い、人と話し、人と一緒に作り上げる。なんだか建築に似ているなと思っています。そして、「おもしろそうだからやってみようか。」という遊び心も大切だと感じています。おもしろそうなことは子供も大人も関係なく巻き込んでいく力があるし、シンプルに楽しいなと思います。